「私」は、ただ「反応」しているだけ。

アラフォー独身女子(彼女はいます)。「人生これでいいのか?」と思いながらも、「毎日楽しく暮らす」のが1番の望み。

『部屋とYシャツと私』は、美しい狂気の世界

 

 

今更ながら、なぜか『部屋とYシャツと私』。


今更な理由は、数か月前に私がやっとこの曲の歌詞をフルで知ったからというだけのことで恐縮なのですが。

 

 

この曲が世に出た頃には、音楽的には気に入ったものの、タイトルなどから自分の考えとは合わない曲だと思い、歌詞をちゃんと聞いていなかった。

「あなたのために綺麗でいさせて」というメッセージのみ受け取り、他は完全に聞き流していた。

 


あらためて最後まできちんと歌詞を知り、こんなに怖い歌詞だったことに驚いている。


検索すると、「部屋とYシャツと私 怖い」と出てくるくらいに怖いと評判だったこともやっと知った。


毒入りスープなんてただの冗談にすぎず、とっても可愛らしい歌詞なのだという意見もある。
感動して泣いちゃうとか。

まさに、賛否両論。

 


だけど、私には可愛らしい歌という印象は、どうしても持てない。


毒入りスープが衝撃的でその部分の印象が強いが、その他も「怖い」のオンパレードだと思うのだけど、どうだろうか。

 


まず、綺麗でいたい理由が「あなた」のため。

さらっと言われるくらいなら嬉しいけれど、繰り返し繰り返し言われると、重い。

 

自分のいびきや歯ぎしりに安心してしまうほど不安定な人と人生を共にするのはキツい。


あなたのため、あなたのため、と言いながら、気に入った子は自分と同じ名前で呼んでほしいという我の強さ。


「あなたとならどこでも大丈夫」というと耳障りはいいけれど、付いて来てほしいと思わなくても付いて来そうな雰囲気。
自分の選択に完全に付き従う人間がいるという息苦しさ。

 


何度も何度もホラーとして楽しんで歌っているうちに、妻が入り込んでいる狂気の世界に、美しさを見るようになった。


ただ、怖いーーー楽しーーーと思って歌っていたのが、閉じた世界の美しさに浸るようになった。

 


夫はどうやら、よく飲みに出かけ、浮気する可能性があり、嘘をつくこともあり、それが簡単にバレるくらいに隙があり、歯ぎしりやいびきを妻が好きだと言うとはいえ対策を講じようとはせず、晩年冒険する可能性無きにしも非ずと思わせるような、シリアスとは縁遠そうな人物であることがうかがえる。

 


夫は妻の狂気には気づかずに暮らす。

 

妻の独り相撲。

 

妻は夫がいなければ生きていられないけれど、
夫は妻がいなくても大丈夫。
それは妻もよくわかっている。


夫を看取ってあげたいという願いは出てこない。


夫のいない世界にはいたくない妻。

 

妻は自己完結を望んでいる。


あなた、あなた、と言いながら、1人きりの世界の住人なのだ。


とてつもなく、幸せそう。


現の世界では手に入らない。

狂気の世界でないと手に入らない幸せ。


閉じた世界が、美しい。